ぼんやりと考えている人

ひろしまなおき (廣島直己)
名前: ひろしまなおき (廣島直己)
住処: シリコンバレー
職業: しがないプログラマ
家族: 愛妻一人、息子一人、娘一人
道具: ハーレー二台、ギター三本
電紙: n at h7a.org

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20 December '2006 - 23:50 | 日米対決 性犯罪者の天国と地獄

妊婦の腹にスタンガンをあてて三人もレイプするようなキチガイ 25歳にたいして、酌量の余地はまったくないといいながらも、若いし反省もしているという理由で懲役 12年の求刑に対して懲役 9年の実刑判決を言い渡す鹿児島地方裁判所

酌量の余地がないのにたったの 9年。どうせ 5年くらいで出てくるんだろう。まさにレイプ魔のパラダイス、ジパングの面目躍如。

しかし、日本では考えられないほど厳しすぎるというか行きすぎというか、完全に法の精神を逸脱しているような判決があったりするのがアメリカ。

たとえば、2003年に Marcus Dixon 事件というのがあった。15歳の白人娘が差別主義者の父を恐れて、当時 18歳の黒人の彼にレイプされたと訴えた事件。

彼は「同意のもとだった」と彼が言う行為の結果、「仮釈放なしの懲役 10年」という実刑が言い渡される。

この事件、黒人差別陪審判決か、性犯罪黒人少年への超厳しい判決かな、くらいにしか当時は思わなかったのだけれど、調べてみたらぜんぜん違った。

実は、陪審員はたったの 20分の協議で「これはレイプじゃない。同意のもとの行為。ぜんぜん無罪」と判定した。それだけの状況証拠があった。にも関わらず、他の理由で実刑になるというすごい話だった。

で、その理由がとても興味深い。

ジョージア州の性交同意年齢は 16歳なので 16歳未満の少女とのセックスは児童性虐待にあたる。しかし、彼らの年齢差は 3年なのでこの場合は児童性虐待ではなく軽犯罪の扱いになる。ただし、その行為の結果、何らかの負傷があった場合には、それは「『悪質な』児童性虐待」と判定される。そして、彼女は処女だったので物理的な負傷があったと判定されることになった。

ジョージアの州法では、「悪質な児童性虐待」は「仮釈放なしの懲役 10年以上」と決まっている。

つまり、レイプじゃない同意のもとでの行為だったと陪審員は合意したけれど、法的には「悪質な児童性虐待」にあたると言わざるを得ず、そう言ってみたら、裁判官から「ちょうえきじゅうねんっ」って判決を訊かされて、みんなパニックに陥ったらしい。なんてことをしてしまったんだ、と。まあ、まともな精神状態の人ならそう思うだろう。

ちなみに彼は、母はドラック中毒で父は不明というありがちなひどい出自なのに、10歳の時に白人家庭に拾ってもらったことがよかったのか、高校では GPA 3.96、SAT で 1200点をとるという、まさに秀才中の秀才だった。

ふつう、こういう出自の黒人はそういう状態からはほとんど抜け出せずに一生を終えるものだったりするし、酷い境遇に生まれてしまった不運な黒人たちをどうすればアメリカ社会が救っていけるのか、おれにはよく分からないけれど、やはり、与えられる環境(だけじゃないけれど)は重要だなあと思う。

なお、2004年に最高裁で「レイプじゃないのに、いくらなんでも重すぎるだろ」ということになって、彼はめでたく釈放された。映画化するとかって訊いたけど、どうなったかは知らない。Oprah のショー には出ていた。

さらに、こういう事件が先にあったばかりだというのにも関わらず、ジョージア州はその翌年にまた同じことやってくれる。

2004年 の Genarlow Wilson 事件。パーティに参加して酔っぱらってセックスした 17歳の娘が、レイプされたと警察に通報。そのパーティのもようを撮影していたビデオで確認したら、その件はとてもレイプとは呼べないものだったのだけれど、それとは別件で 17歳の男と15歳の娘がオーラルセックスしているところも映っていた。

そして、直接訴えられたわけでもなかった彼は、双方が合意のもとでの行為だったと証言したにも関わらず、「仮釈放なしの懲役 10年」を食らうことになる。

少女が 16歳未満とはいえ年齢差は 2歳だし、オーラルセックスなので処女は失われていないから負傷もしてないし、なにゆえ軽犯罪扱いにならなかったのかというと、なんと「オーラルセックス」は 「悪質」扱いになるという法律があるからだった。つまり、彼はふたつ年下の少女とオーラルセックスをしただけで、「悪質な児童性虐待」を犯していることになってしまった。大人が少女をそうした場合のための法律のはずなのに。

陪審員の一人は「Marcus Dixon の事件のことを知っていたら、『悪質な児童性虐待』にあたるなんて言わなかったのに。自分が無知なばっかりに、将来ある若者を十年も刑務所に送るはめになってしまって後悔してもしきれない」と言っているけれど、後の祭り。

十年の刑期を終えて出てきても、性犯罪者登録の義務は一生消えないし、どこに住んでいるかも死ぬまで報告義務がある。

彼は、同意の上での行為だったのに納得できないといって、他の友人全員が承諾した司法取引に一人だけ応じなかった。応じていたら、性犯罪者登録付きで実刑 5年になっていたけれど、「どう考えてもこの結論はおかしいし、必ず正義が自分を救えるはずだと信じている」 らしい。

とはいえ、先日、最高裁への上告が棄却された状況でどういう手が残ってるんだろう...。よく分からない。

Marcus Dixon のケースと違って上告が棄却されたのは、ひとえに「オーラルセックス」だったかららしいけれど、とにかく、ジョージア州というところは、ふつうのセックスよりもオーラルセックスの方が罪が重いという変わった(?)州で、1998年までは夫婦間のオーラルセックスも禁止されていて、なんと最高で禁固二十年だったという。女房に裏切られたら一巻の終わりという状況では、本気で夫婦喧嘩するのは怖いだろうなあ。よく分からないけれど。

3人レイプしても「仮釈放ありの 9年」という日本と比べると、アメリカのなんと厳しいことか。しかも彼らは二人とも未成年でレイプなんてしていないというのに。

まあ、こういうジョージア州での極端な事件をアメリカ一般に当てはめるのはちょっと無理だし、これを日米の違いというのにはかなり語弊があるけれど。おなじアメリカでもカリフォルニア州ならありえない判決だし。

ちなみに、自分の州がどうなってるかに興味がある人は、Statutory Rape: The Dirty Secret Behind Teen Sex Numbers の下の方をどうぞ。

カリフォルニア州では性交同意年齢は 18歳なので高校生はアウトかと思いきや、年齢差が 3年以内なら性犯罪にはあたらない。よかった。

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