ぼんやりと考えている人

ひろしまなおき (廣島直己)
名前: ひろしまなおき (廣島直己)
住処: シリコンバレー
職業: しがないプログラマ
家族: 愛妻一人、息子一人、娘一人
道具: ハーレー二台、ギター三本
電紙: n at h7a.org

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02 December '2005 - 19:43 | 英語 English of no use

英語は得意というほどのことはないけれど、でも別に苦手というほどでもない。 まあ、在米8年程度の英語力はあるんだろうとは思う。

今日、昼飯を食いながら、適当にブログサーフィンしていたら、とある人気ブログのエントリのコメント欄に

There's no use crying over spilt milk.
は受験英語だと
It is no use cry over spilt milk.
で出てきます。useの後にtoのない不定詞が来る構文の例として有名なんですよね。そして、
It is no use of crying over spilt milk.
と動名詞になる場合はofが必要になると習ったと思います。ま、瑣末な話ですけど。

って書いてあるのを見つけた。「有名」なのに知らなかったのもちょっとびっくりだけれど、何度読み直しても、こんな英語がどうして正しいのかさっぱり分からないのもびっくり。たとえ、おれの知らない言い回しでも、何度も口に出して言ってみたらなんとなくしっくりくる、ああ、たぶん聞いたことがあるな、という感じがあってしかるべきなのに、それがまったくない。つまり、たぶん、おれはこんな言い回しは見たことも聞いたこともない。

まあ、そんな言い回しはそれこそ星の数ほどあるのだけれど、この idiom に関して、おれがアメリカで実際に聞いたことがあるのは、以下の 4パターン。

1. It's no use crying.
2. There's no use crying.
3. No use crying.
4. There's no use in crying.

1 は高校で習ったし、2 と 3 も実質、1 と同じようなもんだけれど、前置詞を使うタイプの 4 はアメリカに来て始めてその存在を知った。日本では英語をちゃんと勉強しなかったので、知らなかっただけだけれど。

で、ああ、そういう言い方もあるのかあと思って、あるとき "It's no use in crying" って使ってみたら、それは sounds awkward だと指摘された。"There's no use in crying" は正しいけれど "It's no use in crying" は違う、ということらしい。ふーんって言うしかないし、なんとなく体で覚える系。

ちょっと違うパターンでは、"I have no use for it" というのもアメリカに来てから覚えた。用はない、我慢ならないって感じの意味だと思う。たとえば、"I have no use for Bush" (ブッシュなんかに用はねーぜ)とかね。

あとは "It's of no use" ってのもある。エントリのタイトルにしてみたのは、このパターンの変形。役に立たない英語。英語は役に立たないという意味ではない。

そういうわけで、おれには上の二つの例は、なんか凄くヘンな感じがした。"use cry" はどう見ても文法的に間違ってるように見えるし、"use of crying" も聞いたことないし。で、本当にこいつらは使ってもいいのかと思って、とりあえずアメリカ人に訊いてみた。金曜日だし。

したら、異口同音に、そんな言い方ねーし、間違ってるという。自分の感覚がずれてないのを確認できて、ちょっとホッとした。

もちろん、おれが聞いたアメリカ人は、英語の学者でもなんでもないので、彼らの言っていることが厳密に正しいかどうかはまったく定かではない。

が、英語だけで生きてきた連中、しかもそれなりの大学を卒業してエンジニアをしている程度の知性を持ってる連中が、全員それはヘンだというのなら、それは実際問題、おかしいと言いきって間違いないはずだ。仮にこの二つの例文が何らかの例外として正しいのだとしても、アメリカ人どもがはっきりとおかしいと言ってる英語を覚えて、ふつうの日本人にどういう得があるのかってことだ。

コメントを書いている人の書き方から、かなりの確度をもってこれらの言い回しが正しいということになっているのだろうとは思うけれど、だとして、それが何の役に立つんだろうか。アメリカ人に、これが正しい理由をちゃんと説明できるだけの証拠と参考文献があったら、まあ話の種にはなりそうだけれど、それでもしょせん酒の席でしか使えそうもないネタだ。


幼少のうちから英語をやらせた方がいいなんて微塵も思わないし、正直そんな必要はまったくないし、完全に間違った考え方だと断言できるけれど、もうちょっとというか、もっと実際に役に立つ英語をしっかりと教えるようにした方がいいのは間違いない。ネイティブが使う洒落た言い回しとか、そういう意味ではなくて、海外出張とかで木っ端微塵にならなくても済むような、実際的な会話や、ミーティングや交渉、メールやドキュメントなどのコミュニケーションで実際に役立つような英語。

へんちくりんな試験で受験英語力を確認するためという目的のためには、そんな実際的な英語はあんまり役に立たないのかも知れないけれど、そんな目的は弊害の方が多いと思う。

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